top of page

​‐序文

ヒナワタ及び人形劇団ヒナワタが使用する諸単語は、人形劇史及び文化考察の末に新たに定義が成されている。

そのため使用の際に外部との齟齬があってはならないという想いから、ココに事典という体裁に則って順次紹介(時に改訂)していくことにした。

●ク

傀儡子(クグツ(シ))

 主に狩猟採集関連の仕事につきながら人形劇等の芸能そして徐々に性的サービスまでも観客に提供していった不明瞭性の高い集団であり少なくとも平安時代には実在していた、とヒナワタでは当事者及び先行研究者達の顔色を窺いながらまとめる。著名な研究者達がその詳細について数多くの仮説を建てながらいまだ決定的な正体を明らかにできていない点から、詳細は一旦端に置いて不明瞭性そのものつまり自らのプロフィールを明らかにしない傾向のみに焦点をあてた考察を実施。そして人形劇という観客と操演者の間に人形を介する、つまり操演者の存在を視線から逸らす手法を採択している点から傀儡子をコミュニケーション困難者または逃避者と想定。ここからコミュニケーション・ツールとしての人形劇という定義(日本人形劇史)及び、本人形劇団が目指すべく道筋が定まった。[2024.12.12更新]

●ソ

操演(ソウエン)

 操演者が自覚の有無関係なく物体及び非物体を自己の身心の延長線上に位置すると認識し、対象を文字通り人形(人の形(心身を構成するパーツ群)を成すモノ)化させる行為の総称。そもそも人間は演技という手法を用いて絶対的な役≒他者になることはできない、詳細に言えば役者(操演者)はどこまでも自身の身体が備える感覚とそこで培った経験のみによってしか演技つまり他者を構築することはできない(他者という人形を創り動かしているのはあくまでも自分自身でしかなくソレを克服することは現時点で科学的にも不可能である)という演技論より発生。またヒナワタにおける操演は実際に操演者が動かすことに重要性を置いておらず、精神的に物体または非物体を自身の身心の延長線上に位置すると認識することによっても問題なく人形化すると考える。[2024.12.12更新]

操演者(ソウエンシャ)

 操演行為を行う者の総称。ヒナワタでは基本的にコミュニケーション・ツールとしての人形劇を制作する観点から観客もまた操演者となる、つまりヒナワタにおいては絶対的な観客は存在しないことを示している。ちなみにヒナワタに参加しなくとも交流アプリは勿論のことインターネットやゲームに読書などの娯楽そして食事や育児などの日常行為までもが操演行為にあたるため、ほとんどの人は元来操演者と言える。[2024.12.12更新]

●ニ

人形(ニンギョウ.ヒトガタ)

 ヒナワタでは呼び名を統一的に解釈、人を人たらしめる身心(=人の形を成すパーツ群))の一部と成る(を模した)モノ(だから〝人形〟)と捉え示す単語として使用する。例え対象が人型でなくとも更には非物体であっても、操演者が自身の身心の延長線上に位置する存在(同一的存在)と無自覚でも認識することで人の形を成す物つまり人形となると解釈する。では、もし人間以外がその認識を行ったら…?[2024.12.12更新]

人形劇(ニンギョウゲキ)

 操演が実施される空間の総称、となると一般的な人形劇だけがヒナワタにとっての人形劇でないことは明白である。ヒナワタでは日本の人形劇史の根本をコミュニケーション困難者及び逃避者が社会をサバイブするためにコミュニケーション・ツールとして採用したと解釈するが、その起源もまたコミュニケーション・ツールとして生み出されたのではないのか?という仮説にまで最近は及んでいるとか。つまり自己の身心を他者の目線から隠し逸らし、なおかつ穏和で温厚なコミュニケーション空間の構築を手伝う発明品であったという理解である。そのためヒナワタで制作される人形劇はその規範から脱することはないため、一見すると一般的な人形劇に見えない構成も多く想定されていることは冒頭での解説と一致する。[2024.12.12更新]

●ヒ

ヒナワタ

​ 本人形劇団の名称、及び所属する全劇団員のアーティスト・ネーム。実はしっかりとした由来があるのだが、周囲が聞いて見て勝手にイメージする内容を邪魔しないよう劇団員以外には明らかにしていない。ヒントとしては

【ヒナ】が小さいモノ.幼いモノ.未熟なモノ.着物を着た人形.鳥類の幼体.全ての始まり.とてつもなく脆いモノを指す単語であり、一方の【ワタ】は人形の中身.柔らかい繊維の総称.形の定まらないモノ.形を定めるモノ.とてつもなく脆いモノを示している単語であるということ。そして、折口信夫のとある論文。[2024.12.12更新]

●フ

プロトコル

 定められたシステムが変容しないよう管理するための手順を指す単語。大方の参加型アートや演劇ではプロジェクトという単語が使用される傾向にあるが、ヒナワタの人形劇は何十年何百年と経っても上演され続ける(コミュニケーション・ツールとして定着する)ことを想定しているため保護の観点からプロトコルという単語を使用する。[2024.12.12更新]

●ヤ

山猫まわし(ヤマネコマワシ)

 基本的にはこども相手に人形劇を行う人々を指す、江戸時代の職業名。特徴は演目群のトリ、それまで人型の人形を操演して一般的な人形劇(舞台内で完結する演目)を上演していたのに対し突如毛皮で縫われた小型の四足動物型人形だけが登場する。そして「ヤンマンネツコにカンマンショ」等々言いながら、その人形を操りながら観客のこども達を追いかけまわすのだ。この小型動物人形を山猫と呼び、それで観客を追いかけまわすことから演目名は山猫まわしと呼ばれていたと考えられる。そしてとても単純な構成の演目だが、これがどうも大人気だったことは職業名にまで発展していることからも明らかだろう。2世瀬川如皐(宝暦7(1757)年‐天保4(1833)年)著『只今御笑草』によれば、山猫まわしの本名は〝傀儡師〟である。[2024.12.12更新]

bottom of page